2019.01.23ブログ
樹木希林さんの着物術
昨年亡くなられた樹木希林さん。
すごい女優さんでしたね。
演技ももちろんですが、私生活の特殊性、インタビューなどでみせる飄々とした言動、私も大好きでした。
年を重ねたらこんな女性になりたいなという方が二人いますが、そのうちの一人です。(ちなみにもう一人は阿川佐和子さん。おじさんあしらいうますぎ、だけどご本人かわいらしいとこ、魅力的です!)
樹木希林さんは着物好きでも有名な方です。
ご自身でも着物を着たり、もう着なくなった着物をリメイクした洋服を個性的に着こなしていたり、着物の布自体を最後まで活かしてあげようという気持ちでおられたようですね。
着こなしも渋くてすてきですが、着物に対する気構えというか、いや逆に気構えのなさが面白いなと思ったことがあります。
着物を着る機会の少ない人ほど、着物を着るときには「あれを揃えてこれを揃えて・・・」と準備から大変!
私もお客様には一応準備していただくものリストをお渡ししますが、普段着物を自分で着るときはてきと~です(笑)
冬は肌襦袢でなくヒートテックだし、袖のない「大ウソつき」という名の半襦袢を愛用するし。
でも樹木さんのあるエピソードを読んだ時には「え!そんなのアリ?!」とびっくりしました。
それは出かけた先で着物を着た時のことです。
ホテルで着物を着て、帯を太鼓に締めて出かける。着付けも自分でされるので、一人で着物を自宅から持っていき、用意されたのでしょう。
ところがいざ着ようとしてみると、帯締を忘れてしまっていたのだそうです!
帯締は帯をお太鼓にするには必ずいるもの。帯の中心に巻いてある、細いひも状のものです。
私だったらおそらく急いで近くの呉服屋さんに駆け込んで買いに走るところです。もし近くに呉服屋さんもなければ着物を着るのはあきらめるでしょう・・・。
それぐらい帯締めはなくてはならないもの。
しかしそこで樹木さんがとった行動は、呉服屋さんに行くでもなく、誰かに借りるでもなく、はたまたあきらめるでもなく・・・
なんと、ホテルに備え付けの電気ポットのコードを拝借して、帯締代わりに結んだそうです!
えーーー!!!!
その話を読んだ時はまだ着物歴も浅く、まさか電気ポットのコードを使うなんて、ありえない!と思いました。
確かに電気ポットのコードはちょうど細めの帯締と同じくらいの太さですし、端っこはお太鼓の中にしまってしまえば見えないでしょう。
それでもばれないのかな?と思いますが、意外とその時は誰にも気づかれなかったそうです。
まあ、樹木さんのことなので、だれか「?」と思っても、「何か意味があってやっているのかな?」と思ったのかもしれませんが。
最近「着物ポリス」という言葉を聞きます。ちょっとでも着付けや着ているものの季節がおかしかったら、まったく知らないひとに対してもいちいち注意して回る女性のことらしいです。
でも昔の人は普段着で着ていたので、フォーマルなシーン以外では結構自由な発想で着ていたんではないかなと思います。
さすがに電気ポットのコードは普段使いませんが、私も帯揚代わりにストールやショール使ってみたり、ブローチをしてみたり楽しんでます。
お客様のお宅に着付けをしに行った時も、時折「しまった、あれがないです。どうしましょう?」と言われることがあります。
そんな時は帯枕がなければタオルをくるくる巻いて帯枕代わりにしたり、お子さんのいらなくなった下敷きを切ってもらって帯板代わりにしたりと、工夫させてもらってます。
もちろん市販のお道具はそれ用に作られているので使いやすいですし、ベストですが、なくても何とかするぞ!と。
そのうち「帯締がないです~」と言われたら、「電気ポットのコードでいきましょう!」となるかもしれません(笑)